企業が従業員を雇用して働かせるときには、「安全配慮義務」に注意が必要です。
きちんと労働環境に配慮しておかないと、労災が発生したときなどに重い責任を負わされる可能性が高くなるからです。
今回は雇用者の「安全配慮義務」について解説いたします。
このページの目次
1.安全配慮義務とは
1-1.安全配慮義務の基本
安全配慮義務とは、雇用者が労働者に労働をさせるときに労働環境を安全に保ち、労働者の命や健康を守るべき義務です。
労働契約法においても「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています(5条)。
1-2.具体的な対策方法
企業が安全配慮義務を守るため、どういった対策をとれば良いのでしょうか。
安全配慮義務の内容は一律ではなく、労働の内容や業種、就労場所や環境などによって個別に決定されます。
例えば、高所で作業をさせるときには転落防止用のネットや手すりを設置したり、危険が発生する機械についてはきっちり整備点検を行って安全装置をつけたりする必要があります。
また、危険な作業に従事する従業員にはしっかり安全教育を行い、不適切な行為があれば注意や指導勧告を行うべきです。過重労働や異常な長時間労働が発生しないように配慮する必要もあります。
1-3.安全配慮義務の対象となる労働者
安全配慮義務は、正社員のみならずパートやアルバイト、契約社員などについても発生します。また下請けや出向の労働者であっても、自社の管理下で労働している場合には安全配慮義務が及ぶケースがあるので、注意が必要です。
2.安全配慮義務違反の責任
企業が従業員の安全配慮を怠って労災が発生すると、企業側に重い責任が発生します。
労災が起こった場合、一般的には労災保険から補償が行われます。ただし労災保険による補償だけでは100%の損害補填が行われません。たとえば休業補償は平均賃金の8割ですし、慰謝料も支払われません。
そこで企業に安全配慮義務違反がある場合、労働者から慰謝料などの高額な損害賠償金を求められる可能性があります。
また悪質な場合には、業務上過失傷害、致死などの刑事事件に発展してしまうリスクも存在します。
企業がリスクを抑えて効率的に運営を行っていくには適切な労務管理が必須です。当事務所では安全配慮の方法をはじめとして、中小企業向けにさまざまな法的アドバイスを行っています。自社に法務部を持たず、コンプライアンスに不安を感じている経営者様は、お気軽にご相談下さい。